サーバ障害顛末記

サーバダウン顛末記をこちらにも転記いたします。

●ファーストサーバ大規模障害。まさかその当事者になっていたとは

こういうのを喪失感というのでしょうか。

ここ数カ月、ほかのことを犠牲にしながらこつこつと積み重ね、ようやく完成したホームページ。

さあ、ここから再出発!という矢先の出来事でした。

数日後に迫ったリニューアルキャンペーンに心躍らせながら、最後の追い込み。完成したホームページのデータをパソコンにバックアップし始めた時でした。

「あれ、ftpが固まったかな?」

ダウンロードの進行が突然止まりました。保存すべきデータが消えています。サイトも見えなくなっています。

「おかしいな、何かミスったか・・・」

こういう時、真っ先に自分のミスを疑うのが習性です。でも今はダウンロードしているだけ。

ミスしようがないと思い直し、レンタルサーバの会社サイトを見に行くと、サーバ障害発生のアナウンスが。まあ数時間もすれば復旧するだろうと考え、この日は早めに仕事を切り上げました。

ところが、翌日になってもサイトは見えないまま。

サーバ会社のサイトに並ぶ言葉が不安をかき立てます。

「メールとサイトデータの消失」

「データベースも消失」

「バックアップ復元を断念」

事態は時間とともにどんどん深刻さを増していきました。

そして、認めざるを得ませんでした。

「数ヶ月をかけ、思いを注ぎ、育てあげるように作ってきたものが消えてしまった。どこにも残っていない・・・」

頭の中がふわふわして、ちゃんと物が考えられませんでした。

●落胆・失望、そして喪失感

がっかり、なんて言葉では到底表現できません。

大切な大切なものを永遠に失った・・・そんな気分でした。

人は、こんな風に否応なく、しかも突然に、喪失の思いを知るのか。

改めて、喪失感にうちひしがれる人の悲しみに、思いを重ねることができたように思います。

が、それは後の話です。この時点では自分自身が空っぽになっていて、ただ途方に暮れるばかりでした。

そして次には後悔の念。

サーバ会社を乗り換えていなければ・・・、もっとこまめにバックアップを取っていれば・・・。

やがて、サーバ会社への怒りがフツフツと沸き上がり、心も頭も破裂しそうになりました。

決してダウンしないのがウリじゃないのか。

クラウドでバックアップ保障していたはずじゃないのか。

「お手元のバックアップデータで復旧お願いします」って、その無責任さはいったい何なんだ。

きめ細かいサービスをうたって、中小企業の味方ぶっていたのは、うわべだけのことだったのか。

結局はあきらめるしかありません。

しかし、データが永遠に消えてしまったのが事実で、どうあがいても決して戻ってこないのだと認識するのは、容易なことではありませんでした。

もうインターネット通販はやめて、店だけの販売に戻ろうか。

このまま続けていても、これからはあまりいいことがないかもしれないな。

・・・思考はネガティブに向かう一方です。

気を取り直したのは3日後。

社内のパソコンに断片的に残っている文章や画像を拾い集め、少しずつ再構築を始めました。

●てくてくねっとの歩み。布ナプキン通販のパイオニアとして


黎明期の布ナプキン・・左からムーンフェーズプレーン、ムーンフェーズウィング、グラッドラッグス(いずれもアメリカ製)

「てくてくねっと」が通販サイトとしてスタートしたのは、1997年でした。

実は、あの楽天市場のスタートより早いのです。ネット通販としては老舗に入ると言っても大げさではないと思います。

最初は、夏場にあふれかえる地元のおいしい有機野菜を、新鮮なうちに売りさばいてしまいたい、その一心でした。

しかし、まだまだ食品や生活用品をネット通販で買うなんて考えられないという時代。食べ物や暮らしにこだわりを持つ熱心な人々がファンになって支えてくださったとはいえ、サイトはずっと鳴かず飛ばずでした。

変化があったのは、オープンから2年が経過した頃のこと。

サイトの片隅で販売していた布ナプキンがいきなりブレークしたのです。

『週刊金曜日』編集者の山中登志子さんが『買ってはいけない』という衝撃的な本の中で、市販されている生理用品の危険性を訴えました。

その中にあった「私は布ナプキンを使っています」という一文にひきつけられた女性たちが、初めて聞く「布ナプキン」に興味を持ち、インターネットで検索して「てくてくねっと」にたどり着いてくれたのが始まりです。

当時、日本にある布ナプキンはアメリカの「ムーンフェイズ」という真っ赤なプレーンタイプだけでした。ネットで販売しているのは全国でも当店だけ。あとは情報サイトがひとつふたつある、そんな程度でした。

布ナプキンを初めて使った女性たちが、次々と感想を寄せてくださいました。

「次の生理が待ち遠しくなった」

「長年悩まされていた生理痛や生理不順が改善した」

「自分で洗うことで、意識まで変わった」

「てくてくさん、こんなすばらしいものを紹介してくれてありがとう」

その声が、私たちをどれほど勇気づけてくれたことか。

2000年からの数年は布ナプキン販売のパイオニアとして、多忙で充実した毎日を過ごしました。

●低迷、戸惑い、悩み・・・ そして一念発起のサイトリニューアル

しかし、いい時はそんなに長くは続きません。

大手通販サイトや安売り店、オークションなど、布ナプキンを扱うサイトが増え、販売にかげりが出始めたのです。

販売の主力を、布ナプキンからオーガニック食品やエコ雑貨全般へと広げていくにつれ、「気になるものが何でも手に入る頼りになるサイト」にしたつもりが、お客様から見ると、逆に「何がおすすめなのかわかりにくい、特徴のないサイト」になってしまっていました。

有機野菜や豆腐、生鮮品を中心に販売する実店舗と、サイトの取扱商品との間にズレが生じ、管理に時間を取られる割に利益が出ないという状況にも陥っていきます。

お客様からもドキリとするような声が届き始めました。

「サイトがわかりにくい」

「カートが使いにくい」

「どこにいるのか迷ってしまって買い物しにくい」・・・

そう言われて、全体を客観的に見渡すと、たしかにページデザインもユーサビリティも統一性がありません。

ちょっと乱暴な例えですが、老舗であることだけがウリのおんぼろ旅館みたいなサイトだと、自分で呆れかえってしまったのでした。必要に応じて建て増しを繰り返した結果、階段や廊下がやたら入り組んでしまい、お客様だけでなく従業員さえも自分が今どこにいるのかわからない・・・そんな状態だったのです。

旅館の中なら迷っても、宿の人に「お風呂はどこですか?」とか、「部屋へ戻るには、この階段でいいの?」とか、聞くことができます。でもネット通販では、いったん迷子になったら、お客様はそのまま帰ってしまいます。しかも2度とは来てくださらない。

それ以前に、せっかく来てくださったお客様を迷わせるなんて、失礼きわまりないことですよね。

このままではいけない。真剣に思いました。

その結果のリニューアル決断でした。

古い建物をすっかり取り壊し、新築のホテルに建て替えるような気分です。

セキュリティ、アクセスの安定性、電子商取引に関する経験値の高さ、バックアップ体制など、さまざまなことを考慮し、最も信頼できると踏んだ企業と新たにサーバのレンタル契約を結びました。カートのバージョンも最新のものに変えました。

「てくてくねっと」ぐらいの小規模なショップにとっては、大変な決断です。勉強も重ねたし、石橋をたたいてたたいて、契約先を選定しました。

お客様にとって本当に使いやすい、買い物を楽しめるようなサイトにするためには、ノウハウ面でも情報集積の量でも自分たちだけでは限界があります。15年の通販運営で初めてプロの業者にデザインやサイト構築の一部を依頼しました。

そして自分たちは、伝えたいことがお客様に届くサイトにしよう、お客様の思いがショップに反映できるようなサイトにしようと、コンテンツやカートつくりに専念しました。

また多くの友人たちにもサイトを見てもらい、きたんなく意見やアドバイスをもらいました。

この2ヶ月は、サイトリニューアルが何にも増して優先順位の第一位。寝る間も惜しんで、コツコツとキーボードを打ち続けました。まさに育てるように、思いを注いだ日々でした。

そして、いよいよリニューアルオープンが目前となりました。

お客様へのご案内やポイント10倍キャンペーンやプレゼント企画の準備も完了です。

まだメルマガをとっていないお客様にもDMを用意しました。

お客様にもっともっと喜んでもらえるようになるといいな・・・。

そんな矢先の出来事でした。

●サイトも画像もお客様のデータまでも・・・

サーバ会社によるデータ消失のニュースは、あちこちで取り上げられたのでご存知の方も多いことでしょう。

しかし、まさかその渦中に自分たちが置かれることになるとは、夢にも思いませんでした。

しかも、こんな最悪のタイミングで・・・。

ようやく建て替えが完了したホテルが、オープン直前にもらい火で全焼してしまった、そんな感じでしょうか。

茫然自失になりながらも、まだ使えそうな家具(画像)や調度(文章)を焼け跡から拾い集めました。実際には、焼け跡から何も出てくることはなく、2ヶ月前で止まったままの以前のホームページに残っていた、古いコンテンツをかき集める作業でした。

それにしても何より悲しいのは、お客様との絆そのものである宿帳(販売履歴)や宿泊者ノート(レビュー)が焼けてしまい、もうどこにも残っていないことでした。

サイト自体は、あのいまわしい障害発生当日から1週間で、なんとか再オープンにこぎつけることができました。

業者にお願いしたデザインはほとんど復旧しましたが、中の文章や画像のほとんどはリニューアル前のものです。中にはやや古い情報や画像のリンク切れなどがあって、ご不便をおかけするかもしれず、本当に申し訳ありません。

少しずつ更新していきます。どうぞ長い目で見守ってやってください。

●改めて感謝をこめて

てくてくには、こんな社是(3S)があります。

1)シェアリング(Sharing) 競い合うより分かち合いたい

限られた資源、そして命。資本主義社会は他人を蹴落としてのし上がることを要求しています。そしてそれは貧富の差や南北格差、差別だけでなく、人の心をもばらばらにしてしまいます。私たちは競争社会から共生社会へと未来を目指していきたいと思います。フェアトレード商品を積極的に扱います。

2)サステナブル(Sustainability) いつまでも続く未来を選択します

持続可能な社会は欲望のために資源を収奪したり、環境を破壊したりしません。使い捨てをやめ、リサイクルやリユーズ可能な商品を積極的に扱っていきたいと思います。また、農薬や遺伝子組み換え、添加物やダイオキシンは命の循環を壊していくので、わたしたちは有機栽培のものや自然に近い食品や雑貨を扱っていきます。原子力発電所はいりません。

3)スピリチュアル(Spiritual) たましいがよろこぶ仕事と生き方

ここでいうスピリチュアルというのは宗教的なものではありません。自分や他人、そして動物や植物、地球や宇宙もひっくるめて、いのちにやさしく誠実な生き方をしたいという思いです。それは仕事や生活全般にもいえることです。物質文明に片寄った今の社会へのアンチテーゼです。 だから、障害にぶつかったからといって歩みを止めるわけにはいきません。これからもゆっくり確実に「てくてく」歩んでいきたいと思います。

今回、多くのお客様や友人たちから励ましの言葉をいただきました。

その一つひとつに元気づけられ、勇気をもらいました。

「励ましの言葉」って、ひどく打ちのめされた後、新たな一歩を進めるための大事な栄養なんだなって、しみじみ思いました。

心から、ありがとうございます。

これからも「てくてくねっと」をよろしくお願いします。

よかったらこちらも読んでいただけたら、うれしいです。

てくてく創生物語

                      2012年7月1日

      有限会社てくてく   通販サイト「てくてくねっと」 

                     代表 立田(阿部)秀信